超小型モビリティは自動車?
ミスターリード:
まずは、超小型モビリティでの交通事故についてお伺いします。
軽自動車よりもコンパクトな1人または2人乗りの車である超小型モビリティは、利用者はまだ少ないですが、レンタルして運転することもできます。
トヨタが2020年に超小型の電気自動車を発売する予定もあり、この先、シェアが広がる可能性もありそうです。
超小型モビリティは、普通の乗用車と比較するとかなり小さいですが、車には変わらないので、事故が起こった際の過失は自動車対自動車として考えるのでしょうか?
弁護士法人・響江橋大樹弁護士:
超小型モビリティの過失割合は、自動車対バイクの交通事故に則って、バイクと同等で考えることになると想定されます。
まず、超小型モビリティは、車両の構造によって、自動車として扱われるものと、原付バイクとして扱われるものがあります。
通常であれば、自動車として扱われるなら自動車、原付バイクならバイクとして交通事故時も考えるべきです。
しかし、超小型モビリティと普通自動車の衝突事故が発生したら超小型モビリティのほうが損害は大きくなると考えられます。
これは、自動車として扱われる場合も、バイクとして扱われる場合も同様です。
そのため、超小型モビリティと普通自動車では、車両の構造にかかわらず自動車の運転手により大きな注意義務があり、過失割合はバイクと同等で考えるのが適当と言えるでしょうね。
青色ナンバーは原付バイク扱いになる?
ミスターリード:
三輪の原付バイクなどで青色(水色)ナンバーの車を見かけることがあります。
ヘルメットを着用していないのでバイクではないでしょうし、大きさも超小型モビリティに近いです。
となると、青色ナンバーの車の交通事故は、超小型モビリティのケースと同じように考えて問題ありませんか?
弁護士法人・響江橋大樹弁護士:
青色ナンバーの三輪バイクの交通事故は、バイク事故の過失割合に則って考える必要があるといえます。
この点では超小型モビリティと同じですが、超小型モビリティと青色ナンバーは、車の種別は同じではありません。
青色ナンバーは、超小型モビリティよりもさらに小型の車で、道路交通法ではミニカーという小型自動車に分類されます。
そして、トレッド幅(左右タイヤの中心間の距離)が0.5m以上の三輪の原付バイクはミニカーとして登録することができます。
ミニカーは自動車ですので、事故にあった場合は自動車事故として過失割合を考えるのが原則です。
しかし、ミニカー扱いの三輪バイクと通常の原付バイクとの違いは、基本的にはトレッド幅の違いだけです。
それだけの違いで、事故時の扱いや運転中の注意義務が変わることには疑問が残ります。
したがって、ミニカー扱いの三輪バイクは、バイクの過失割合に沿って考えるのが適していると思われます。
シニアカー、ストライダー。高齢者や子どもの乗り物は?
ミスターリード:
シニアカーで移動している高齢者の方を見かける機会も増えました。
シニアカーで事故にあった場合、過失割合はどう扱われるのでしょうか?
弁護士法人・響江橋大樹弁護士:
シニアカーは、道路交通法上では「身体障害者用の車いす」に該当します。
この身体障害者用の車いすが歩行者として取り扱われるため、シニアカーも歩行者として考えることになるでしょう。
またシニアカーは電動ですが、時速は6km以下で、事故が起きた際のケガや損傷は、自転車や自動車と比べて大きくなることが想定されるため、シニアカーの注意義務は歩行者以上にはならないと思います。
このことからも、シニアカーに乗った交通事故の被害者は、歩行者として考えることになると想定されます。
ミスターリード:
ストライダー(ペダルなしの二輪車)に乗った幼児の交通事故はどうなりますか?
歩行者とも、自転車とも考えられそうな気がします。
弁護士法人・響江橋大樹弁護士:
ストライダーは車両ではなく遊具で、自転車の前段階で子どもたちが遊ぶ乗り物です。
ペダルがなく、両足で地面を蹴って前進することから、ストライダーは歩行者として考えると想定されます。
スケボーやセグウェイで公道を走り、事故にあったら
ミスターリード:
スケートボードに乗った若者が勢いよく道路を滑っていく姿を見かけることがあります。
スケボーは車両として考えるのでしょうか?
弁護士法人・響江橋大樹弁護士:
基本的には歩行者として考えると思います。
スケートボードは遊具であり、車両とは言えません。
ストライダーと同じように、足で蹴って進みますので、歩行者に近いと考えることができます。
過去の裁判例を見ても、スケートボードと普通自動車の交通事故では、スケートボードの使用者が歩行者に準ずることを前提に判断がなされています(東京地裁平成15年6月26日判決)。
ただし、この裁判例では、スケートボードで遊んでいた児童に危険な行為があった判断され、スケートボード側にも40%の過失がついています。
これが大人だったら、過失は50%以上になっていたかもしれません。
このことから歩行者として考えるものの、スケートボード側にも大きな過失がつく可能性があるといえるでしょう。
ミスターリード:
最後はセグウェイの場合を教えてください。
セグウェイは公道での使用が禁止されていますが、もし無許可でセグウェイを公道で使用し、交通事故にあったらどうなりますか?
弁護士法人・響江橋大樹弁護士:
セグウェイ自体は歩行者または自転車に該当すると考えられます。
しかし、セグウェイで公道を走ってはいけないと知りながら、警察の許可なくセグウェイで公道を走って交通事故にあった場合、当然ながらセグウェイ側に過失がつくでしょう。
セグウェイに乗っていたことが過失割合の判断に大きく影響し、セグウェイ側に事故の原因があった場合は、相手よりも大きな過失がつく可能性があります。
ミスターリード:
自動車、バイク、自転車以外の乗り物での交通事故は判断がとても難しくなりそうです。
そうなると、保険会社との主張の食い違いも出やすいことも考えられます。
保険会社の言う通りに示談をしたり、自分で判断したりせず、弁護士に相談しながら慰謝料請求を進めたほうが良いかもしれませんね。