労災保険を交通事故で使うメリットとデメリット

交通事故コラム

仕事中・通勤中の交通事故。補償は労災保険と相手の保険のどちらから受け取る?

通勤途中や仕事の移動中に交通事故に遭うこともあります。仕事中の事故は労災保険を使用することも、加害者の自賠責保険や任意保険に慰謝料請求することも可能ですが、両方の保険から重複して補償を受け取ることはできません。
治療費などはどちらに請求すればいいのか。加害者の保険に請求したほうがいいケース、労災保険のほうが良いケースの解説や、労災保険で支払われる補償についてご説明いたします。

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  1. 労災保険とは?交通事故で適用されるケース
  2. 加害者の保険と労災保険はどっちを使ったほうがいい?
  3. 労災保険を使用したほうがいい交通事故とは?
  4. 労災保険で支払われる補償
  5. 労災保険と自動車保険(自賠責・任意保険)の違い
  6. 労災保険の申請方法
  7. 労災保険を利用する際に気をつけたいこと

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労災保険とは?交通事故で適用されるケース

労災保険とは、労働者が仕事中にケガ、病気、死亡した場合の補償として保険金の給付を行う制度のことです。

正式には、「労働者災害補償保険」と言います。

労災保険と聞くと、肉体労働をする仕事の人が、業務中の事故などで負傷した場合に適用されるものと考える方もいるかもしれませんが、そのようなケースだけでなく、交通事故でも適用されます。

交通事故は、労災保険が適用されるケースとして定められている第三者行為災害に該当するからです。

事故の程度は関係ありません。

勤務時間中の移動や通勤途中、帰宅途中の交通事故で労災保険を利用することができます。

自動車やバイクを運転していた場合だけでなく、自転車や徒歩で移動していた際の事故も該当します。

会社は従業員を労災保険に加入させることが労働基準法で義務付けられていますので、正社員、契約社員、パート、アルバイト、日雇い労働を問わず加入しているはずです。

万が一、会社が労災保険料を滞納していた場合は、労災保険の事故後適用を申し立てることで、給付を受けることができます。

労災保険が適用されるケースの一例

  • サラリーマンが営業車で移動中に交通事故にあった
  • 主婦が徒歩でパート先へ出勤途中に交通事故にあった
  • 配達のバイトをする学生がバイクで配達途中に交通事故にあった

以上のように、勤務中だけでなく、出勤退勤時間も労災保険が適用されます(仕事中の事故は業務災害、出勤退勤中の事故は通勤災害と言います)。

ただし、必ず労災と認められるわけではなく、仕事中や出退勤中の事故でも、「休憩時間に外出して交通事故にあった」、「仕事後に飲みに行き、その帰り道で交通事故にあった」場合などは、労災の使用が認められない可能性があります。

仕事中の事故であるにもかかわらず、「労災保険は使えない」と会社に言われた場合は、弁護士に相談をする際に、その旨も話してみてください。

交通事故で労災保険が適用されるケース

加害者の保険と労災保険はどっちを使ったほうがいい?

労災保険が適用されるケースであっても、加害者の自動車保険(自賠責保険や任意保険)から補償を受け取ることができます。

しかし、原則としてどちらか片方の保険からしか補償を受け取ることはできません

国から支払われる補償を二重で受け取ることになるからです。

たとえば、治療費を両方の保険から受け取ったら、実際の損害(支払った治療費)以上の金額を受け取ることになってしまいます。

労災保険を使用できる場合、労災保険と加害者の保険のどちらから補償を受け取るかは、事故被害者が決定できます。

会社から労災保険の使用を断られることもあるようですが、本来、会社に決定権はありません。

任意保険+労災で損のない慰謝料請求を

加害者が任意保険に加入しているのであれば、加害者の任意保険に慰謝料請求したほうが良いケースが多いです。

労災保険には慰謝料がないことなどが理由で、事故被害者が受け取る金額に大きな差が出る可能性があります(詳しくは後述の「慰謝料の違い」でご説明しています)。

また、どちらかの保険からしか補償を受け取れないとご説明しましたが、労災保険で支払われる補償の一部は、加害者の保険に慰謝料請求する場合でも受け取ることができます。

代表的なのが、仕事を休んで収入が減った場合、後遺障害等級の認定を受けた場合などに支払われる特別支給金です。

つまり、加害者の保険に請求したうえで労災保険も一部使用すれば、より多くの補償を受け取ることができます。

加害者の保険に慰謝料請求した場合

労災保険を使用したほうがいい交通事故とは?

加害者の保険に慰謝料請求したほうが良いケースが多いものの、ご事情によっては相手の保険に請求せず、労災保険から補償を受け取ったほうが良いケースもあります。

次のようなケースでは労災保険の使用をおすすめします。

加害者が任意保険未加入で損害が大きい

加害者が自賠責保険にしか加入しておらず、損害が自賠責保険の上限金額を超えそうなケースでは、労災保険を使用したほうが良い可能性があります。

自賠責保険への請求は、治療費や慰謝料などを合算して上限金額が120万円(傷害のみの場合)と決まっており、超過した金額は受け取ることができないからです。

治療期間が長くなると治療費だけで120万円を超えてしまうこともあります。

この場合、自賠責保険だと、治療費、休業損害、慰謝料を合わせて120万円しか支払われませんが、労災保険なら治療費全額と休業(補償)給付が支払われます。

加害者が自賠責保険にも加入していない

加害者が自賠責保険にすら未加入だった場合は、慰謝料請求できる加害者の保険がありません。

加害者に直接請求しても支払い能力がない可能性が高いので、労災保険から補償を受け取ったほうが良いでしょう。

示談するまでに時間がかかる

「加害者が自分の責任(運行供用者責任)を認めず相手の保険会社は慰謝料に応じない」、「過失割合の主張が大きく異なる」などの状況では、示談交渉が長期化する可能性があります。

このようなケースでは、労災保険を使用したほうが補償をスムーズに受け取れる可能性があります。

自分の過失が大きい

自分の過失割合が大きかった場合も労災保険の使用を推奨します。

相手の任意保険に慰謝料請求する場合、被害者に過失があると過失の分だけ賠償金が減額されます(過失相殺)。

しかし、労災保険なら過失割合に関係なく補償を受け取ることができます。

労災保険で支払われる補償

労災保険で申請できる補償

次は労災保険から支払われる補償をご説明します。

労災保険の給付内容

給付される補償の名称 詳細
療養(補償)給付 治療費のことです。入院費用や看護費用なども含まれます。
休業(補償)給付 収入の減少に対する補償です。会社を4日以上休んで減給があった場合に給付されます。休業(補償)給付のほか、休業特別支給金も支払われます。
障害(補償)給付 後遺障害が残って等級の認定を受けた場合に、等級に応じた金額が給付をされます。
遺族(補償)給付 死亡事故で遺族が申請できます。被害者と家計を共にしていた家族に支払われる遺族年金と、遺族年金の受給資格者がいない場合などに支払われる遺族一時金があります。
葬祭料 死亡事故の葬儀費用を申請できます。
傷病(補償)年金 治療開始から1年6ヶ月が経過してもケガが完治せず、傷病等級の認定を受けた場合に申請できます。
介護(補償)給付 ケガの治療で介護を受けている場合に給付されます。

上記は、労災保険で申請できる補償です。

治療費や仕事を休んだ補償、後遺障害が残った場合の補償などがあります。

療養(補償)給付は、通常の病院だと治療費を立て替えて請求する形なりますが、労災保険指定病院(都道府県の労働局が指定した病院)に通院すれば、治療費を立て替えることなく診察を受けることができます。

労災保険指定病院は、厚生労働省の労災保険指定医療機関検索から確認することができます。

また、障害(補償)給付の等級認定は、労災保険から認定を受けるものです。

認定の基準などは自賠責保険の後遺障害等級とおおむね同じですが、一部異なる部分があります。

労災保険と自動車保険(自賠責・任意保険)の違い

労災で支払われる補償をご説明しましたが、ここからは労災保険と自動車保険(自賠責・任意保険)で支払われる補償の違いを具体的にご説明していきます。

なお、自動車保険から支払われる補償の種類を確認したい方は、『示談金の内容』をご確認ください。

休業(補償)給付と休業損害の違い

労災保険の休業(補償)給付と自動車保険の休業損害では、対象期間と支払い金額に違いがあります

対象期間の違い

休業(補償)給付は、会社を4日以上休んだ場合に支払われます。

いっぽうで休業損害は、1日だけ休んだ場合でも支払われます。

また、休業(補償)給付は最長1年6ヶ月までで、1年6ヶ月以上の長期休養が必要な場合は、傷病(補償)年金に切り替わります。

休業損害の場合は、ケガが完治(または症状固定)を迎えるまでが対象期間となります。

支払い金額の違い

休業(補償)給付は、事故前の収入の6割が補償されます。

また、休業(補償)給付とは別で休業特別支給金も支払われ、収入の2割が補償されます。

そのため労災保険を使用すれば、事故前の収入の8割を受け取ることができます。

いっぽうで休業損害は、自賠責保険だと治療1日あたり最大19,000円(収入を証明できる場合)が支払われます。

収入によっては、自賠責保険に請求したほうが収入減に対する補償を多く受け取れます。

慰謝料の違い

人身事故の場合、自動車保険には入通院慰謝料と後遺障害慰謝料がありますが、労災保険には慰謝料という項目がありません。

慰謝料は、事故を起こした加害者が被害者に対して与えた精神的な苦痛に対して支払われる補償で、労災保険は事故の相手方ではないからです。

そのため、任意保険に請求すれば慰謝料が数百万円になるようなケースであっても、労災保険での慰謝料は0円となります。

後遺症が残った時の違い

後遺障害等級の認定を受けると、自動車保険では、後遺障害慰謝料と逸失利益(将来の収入の補償)が支払われます。

いっぽうの労災保険では障害(補償)給付が支払われます。

障害(補償)給付は、障害(補償)年金、障害(補償)一時金、障害(補償)特別年金、障害(補償)特別支給金、障害特別一時金に分けられ、認定された後遺障害等級によってそれぞれ金額が異なります。

傷病(補償)年金の違い

労災保険にのみ傷病(補償)年金があり、傷病(補償)年金は、ケガによる休養が1年6ヶ月以上になる場合に、休業(補償)給付に代わって支払われます。

傷病(補償)年金には、傷病(補償)年金、傷病特別支給金、傷病特別年金があり、金額は認定される傷病等級によって異なります。

労災保険の申請方法

労災保険を申請できる人
本人、家族、勤務先
届出先
医療機関、労働基準監督署

労災保険の申請方法を確認していきます。

労災はご本人以外も申請可能ですので、「治療などで手が回らない」、「難しくてよくわからない」といった場合は、会社にサポートの相談をしてみましょう。

労災を使用する際には医療機関、保険者、労働基準監督署に対する手続きがあり、はじめに、ケガの治療を受ける医療機関に労災で治療を受ける旨を伝えてください。

その後、医療機関に「療養補償給付たる療養の給付請求書」または「療養給付たる療養の給付請求書」という書類を提出する必要があります。

入通院先が労災指定医療機関なら書類を提出すれば、被害者による治療費の支払いはありません。

労災指定医療機関以外の医療機関の場合は、提出した書類に診療内容を記載してもらって受け取り、それを労働基準監督署に提出すると、立て替えて入通院した分の治療費が、療養(補償)給付として後日支払われます。

また、療養(補償)給付以外の給付についても、労働基準監督署に書類を提出して受け取ります。

書類は、厚生労働省のWebサイトでダウンロードが可能です。

労災保険を利用する際に気をつけたいこと

最後に、労災保険を使用する際に注意してほしいことをお伝えします。

デメリットとまでは言いませんが、労災保険を利用することで勤務する会社との関係性に悪影響が出てしまう可能性があります。

悪影響が出るのは、会社が労災保険の使用に非協力的だったケースで、少人数の企業にお勤めだと、労災の使用が原因で社内の立場が悪くなったり、人間関係が悪化したりすることが時々見受けられます。

労災保険の使用は事故被害者に決定権がありますが、会社が消極的で会社との関係をこじれさせたくない方は、会社との関係性も考慮して、労災保険と加害者の保険のどちらから補償を受け取るか考えてみてください。

Mr.リードからあなたへ

「仕事中の交通事故だから労災保険を使用する」と考えてしまいがちですが、労災保険と加害者の保険のどちらが良いのかの答えは事故の詳細によって異なります。

賠償金の金額で考えれば、相手の任意保険に慰謝料請求し、弁護士に依頼して慰謝料を増額させることが一番良いケースも多いです

どの保険から補償を受け取ればいいか迷ったら、一度弁護士に相談することをおすすめします。

交通事故の専門家と一緒に、あなたにとって最善の判断をしていきましょう。

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