休業損害の計算式は?
休業損害の計算式は、「自賠責基準」と「裁判基準」で異なります。
自賠責基準の場合は、「1日あたり6,100円×休業日数」で休業損害の金額を算出します(2020年4月1日以降に発生した事故の場合)。
裁判基準の場合は、「日額基礎収入(1日あたりの損害額)×休業日数」という計算式を使用し、日額基礎収入の算出方法が被害者の職業や肩書きで異なります。
ここでは、裁判基準における休業損害の計算方法を解説していきます。
会社経営者・会社役員の休業損害
会社経営者や会社役員は、金額の計算以前に、そもそも休業損害が認められるかが争点になりやすいです。
会社員は仕事を欠勤すると給与が減額されることが多いですが、会社経営者や会社役員の場合、仕事を休んでも役員報酬は減額されないことが多いためです。
減額されない場合、収入に損害が発生していないため、休業損害が支払われない可能性があります。
「減額はなくても経営者が働けなかったら大きな損害だ」と主張しても認められないかもしれません。

また、休業損害を請求できる場合でも注意が必要です。
会社経営者や会社役員では、役員報酬を休業損害の計算にそのまま用いることは難しいです。
これは、役員報酬には、「会社の利益配当」「労務に対する対価」の2つの要素があり、休業損害が認められるのは、「労務に対する対価」のみだからです。
会社経営者や会社役員の日額基礎収入は「(役員報酬-利益配当)÷365日」という計算式で算出することになります。
利益配当と労務に対する対価の割合は決まっておらず、ケースバイケースです。
会社の規模感や事故被害者がどの程度の労務を行っていたかなどで変わってきます。
報酬が多い場合、この割合の違いで休業損害の金額が大きく変わる可能性があります。
また、毎日多忙な経営者の人にとっては、自分で保険会社とやりとりをする時間が作るのはとても大変です。
そのため、休業損害を含めた慰謝料請求は弁護士に依頼して進めたほうが良いかもしれません。
会社役員の休業損害や慰謝料請求については、事故被害者のインタビューを掲載しています。
「損失があるのに補償されない!?会社役員Kさんの慰謝料の現実!【交通事故インタビュー】」もご参考ください。
フリーター、アルバイトの休業損害

フリーターの場合、ケガをしてアルバイトに出勤できなくなった分、収入が減ってしまいます。
その減収分を休業損害として請求することが可能です。
フリーターの日額基礎収入は、基本的には会社員の計算と同じように次のいずれかで行います。
- A:事故前3ヶ月間の収入÷90日
- B:事故前1年間の収入÷365日
ただし、フリーターの場合、月によって収入や出勤にばらつきが出やすく、極端に少ない月がある中で上記の計算をすると、日額基礎収入も休業損害の金額も低額になってしまいかねません。
そのため、90日や365日ではなく、期間中の勤務日数で割り算をすることもあります。
具体例で確認をしてみましょう。
事故でケガをしてアルバイトを2ヶ月休んだ人がいました。
1ヶ月平均21日勤務していたのですが、直近3ヶ月のうち1ヶ月だけ所用で出勤が少ない月がありました。
その場合の休業損害は、下記のように計算します。
- 直近3ヶ月の収入:25万円、17万円、25万円
- 直近3ヶ月の出勤日数:21日、15日、21日
日額基礎収入=
(25万円+17万円+25万円)÷(21+15+21)
=67万円+57=1万1754円
2ヶ月間(42日分)アルバイトを休んだので、休業損害は以下のようになります。
休業損害=1万1754円×42日
=49万3684円
- ※小数点以下切り捨て
無職(求職中、年金受給者)の休業損害

事故当時は無職の人にも休業損害が支払われる可能性があります。
「支払いの判断には就職活動をしていて内定をもらっていた」、「毎日家事をしていた」などの事情が大きく影響します。
就職先が決まっていた場合
「無職だけど翌月からの就職が決まっており、交通事故で就業が遅れたり就職できなくなったりした」。
このようなケースでは、収入に影響が出ていますので休業損害を受け取れる可能性が十分にあります。
内定先で受け取る予定だった給与をもとに、会社員と同じように休業損害を計算します。
就職活動を行っていた場合
「就職活動を行っていたけど、まだ就職先は決まっていなかった」といった場合も休業損害が支払われる可能性があります。
「交通事故によるケガで数ヶ月間就職活動ができなかった」、「事故以前は就職活動を勢力的に行っていたので、ケガがなければすでに働いていたはず」などの事情が認められるかが休業損害を請求する際のポイントとなります。
金額の計算は、「賃金センサス」を用いて、「賃金センサス÷365日」という計算式で日額基礎収入を算出します。
不労所得のみで生活をしていた場合
配当や不動産など不労所得のみで生活をし、仕事をしていなかった場合、休業損害は認められない可能性が高いです。
年金受給者や生活保護受給者の場合
年金や生活保護などを受け取っており、仕事をしていない場合は、基本的には休業損害は発生しません。
ただし、受給者が毎日家事を行っており、ケガで家事ができなくなった場合は、家事ができなくなったことに対して休業損害を請求できる可能性があります。
外国人の休業損害

外国人の方が交通事故でケガをした場合は、在留資格やビザによって休業損害の計算方法が異なります。
日本で仕事をしていた外国人の場合
日本で仕事をして収入を得ている外国人の場合は、日本人と同じように休業損害を計算します。
これは、永住者の場合も就労可能な在留資格を所有している人の場合も同じです。
しかし、ケガの治療中に在留資格の期限が来て更新をしていた場合には、引き続き日本に住み仕事をする予定だったことを説明する必要があります。
不法に日本で仕事をしていた外国人の場合
不法就労(就労可能な在留資格の抹消後も日本で働いていた)場合でも、休業損害が支払われる可能性があります。
このような場合は、実収入に沿って休業損害を計算すると考えられており、過去の裁判でも不法就労の外国人の休業損害が認められたケースがあります。
観光で訪日していた外国人の場合
観光などの理由で日本に来ていた外国人が日本国内で交通事故にあった場合も休業損害が支払われる可能性があります。
この場合、事故が原因で帰国後の仕事に影響出たことを示し、本国での収入をもとに休業損害を計算していくことになります。
Mr.リードからあなたへ
休業損害の金額は、相場があるわけではなく、肩書きや収入、仕事に影響した期間などによって異なります。
そのため、適切な金額を受け取るためには、一人ひとりの事情を整理したうえで計算する必要があります。
肩書きや収入は逸失利益の計算にも影響し、専門的なものとなります。
休業損害の金額や保険会社の言い分に不満がある人は、「交通事故診断」を行い、弁護士に相談してみてくださいね。
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